声優のオーディションの場合、台本は事前に渡されることもあれば当日になることもあります。
もし当日に渡されたら緊張してパニックになるかも、と不安になるかもしれません。
それを避けるには、声優の台本についてよく知ることと、日頃から台本のサンプルを使って練習することがポイントです。
オーディションの場で演じるキャラになりきってセリフが言えるように、プロの声優が何を台本に書き込むかなどについて説明します。
目次
声優が使う台本(セリフ)について
声優が使っている台本は、単にセリフが書き込まれているだけではありません。
例えば120・河瀬にバッタリ会って驚く山口・山口のセリフというふうに、カットナンバー・状況説明・セリフの3つに分かれて表記されています。
カットナンバーはカットごとにつけられている番号で、セリフを修正したり撮り直し箇所の説明・指示などをする時に使われます。状況説明はキャラの動作や表情、場面などの説明部分。
セリフ部分には各キャラのセリフが書かれています。この部分にSEと記されていることがありますが、これはsound effect(サウンド・エフェクト)の略で、効果音のことです。
声優は台本をもらった後、まず「素読み」をする
素読みとは簡単に言うと、声を出して台本を終わりまで読むことです。
この作業は、ストーリー全体の流れやその場面の状況、キャラの出番や性格と言ったことをざっくりと把握することが目的なので、読む時は感情を込めません。
また声優の多くは、この時に自分が担当するセリフにチェックを入れたり、読めない漢字に仮名を振ると言った書き込みもしています。
その後アフレコ(声優が担当キャラに声を当てること)に合わせて練習をし、収録に進んでいきます。
台本を渡されてから本番収録までどのくらい時間があるのか気になるところですが、1週間から前日と幅があります。
余裕があれば練習時間も多く取れますが、アフレコ前日に台本を渡される場合も多く、声優はそれに合わせてスケジュールを組み、収録までに仕上げていきます。
声優台本の見方
キャラを演じきるため、声優は台本にいろいろなことを書き込んでいます。中には声優業界内で使われている特殊な記号もありますが、よく使われているものをいくつかご紹介します。
声優業界しか知らない記号とその意味
(息)
ため息や驚いて息を呑むなど、息を使った演技を表します。
同じ呼吸でも、荒いまたはゆっくりという風に分けられ、そこからさらに、怒りに満ちた時の荒い呼吸、戦闘が終わった後の荒い呼吸など細かく分けることも出来ます。
こうした細かな呼吸の演技が求められる時に使われるのが(息)の記号ですが、わざとらしくならないように気をつけつつ、相手に伝わるように表現するのは声優の力量にかかっています。
(笑)
笑い声を表現する記号です。息と同じく笑いにもいくつか種類があるので、使い分けるために台本に書き込まれます。
笑い方一つでキャラの性格や作品全体に大きく響くこともあるので、声優は細かく演じ分ける必要があります。
大きな声で「あはは」と笑う、ミステリアスなニュアンスを含めて「フフ」といった笑いがありますが、声優はキャラの性格や状況で演じ分けています。
(咳)
咳をする演技が必要な時に使われる記号です。咳払いから病気の時の咳き込みまでと、咳の表現も多岐にわたっています。
(舌打ち)
舌打ちは「チッ」と舌を鳴らすことですが、これも表現方法に種類があるので、台本に書き込まれることが多い記号に入ります。
(キス)
キスするシーンに使われる記号です。
表現が難しいとされるキスシーンですが、手の甲を使って音を出したり口だけを使ったりと、声優によってキスの表現方法は違ってきます。
(ガヤ)
群衆がざわざわしている様子を表現する効果音の一つです。収録する時は数人から数十人がかりで、人混みや人のざわめきを演じます。
声優は何を台本に書き込んでいるのか
書き込み内容は声優によって変わってきますが、声優は主に自分が担当するキャラの性格や息継ぎ、演じる時に注意することなどを書き込みます。
声優は台本を読む際にずっと眺めていられるのか
俳優は台本のセリフを覚え、舞台では台本を全く見ずに演技をします。
声優もキャラを演じる部分がありますが、基本的に台本から目を離しません。なぜかというと、台本から離してしまったら、次に読む部分がわからなくなってしまうからです。
声優の場合、セリフや書き込みも含め、目を離さずに台本を読むのが基本のスタイルです。
台本をめくる際に音が出ていないのは編集を行っているのか
台本をめくる時に出る音のことをペーパーノイズと言います。
作品にペーパーノイズが出ていないのは、編集ではなくリテイク(やり直し)をするから。
マイクがペーパーノイズを拾ったらそのカットは撮り直しすることになるので、声優は音が出ないようにページをめくる工夫をしています。
具体的には、ページをめくりやすいように手の乾燥を防いだり、セリフが2ページにまたがっている場合、書き写してセリフを同じページにまとめると言ったことです。
声優オーディションの台本について
通常声優オーディションでは、登場人物とセリフが印刷されている紙を台本として渡されます。
セリフはA4サイズ半~1ページ程度の長さで、登場するキャラの性格について説明はなく、自分で想像して演じる必要があります。
台本はオーディション当日に渡されることが多く、短時間でキャラになりきってオーディションに臨まなくてはなりません。
声優オーディションの台本はどのレベルの漢字が出てくるのか
歴史を題材にした作品など、オーディションで受ける役柄によっては難しい漢字が出ることもあります。
レベルとしては、漢字検定2級程度と言われていますが、普段からいろいろな漢字に慣れておくといいでしょう。
それでも、読めない漢字に出会うことがあります。もし台本にわからない漢字が出てきたら、必ず事前に事務所のスタッフや同行しているマネージャーに聞くようにしましょう。
恥ずかしいことかもしれませんが、オーディション本番でわかりません、となるよりずっとマシですし、オーディションの台本でわからない漢字が出現するというのは珍しいことではありません。
漢字の読みも大事ですが、漢字が持つイントネーションの把握も重要です。
同じ読み方でも複数のイントネーションを持つ言葉もあるので、要求された読み方で演技ができるように、複数のイントネーションに対応しておくといいでしょう。
性別キャラ別台本サンプルとサンプル
オーディションでは演じるキャラの性格を自分で想像する必要があるので、普段から様々なキャラのセリフを練習しておくと、本番で冷静に対応できるでしょう。
台本のサンプルは自分で作成してもいいですが、サンプルを紹介しているサイトなども併用して、できるだけ沢山のキャラに挑戦してみましょう。
ここでもキャラ別のセリフをいくつか紹介するので参考にしてください。
正義感あふれる想像上の騎士(男性)
勝算がないからといってこの村を見殺しにすることは出来ない。
我々は国を守るため騎士になったのだ。妻や子供を守り、国民のために最後まで戦おう。
勇気を奮い立たせ、今こそ騎士としての使命をまっとうするのだ!
近所のせんさく好きおばさん(女性)
あら、健二くんじゃない?健二くんでしょ?久しぶりねぇ。まあまあこんなに立派になっちゃって。
今何してるの?どこに就職したの?お母さんには会った?本当に懐かしいわぁ。
しばらくここにいるならお茶でも飲みに来なさいよ。うちの息子も待ってるから。
真面目で元気のいい部活の後輩(男女)
先輩、お、おはようございますっ!昨日は遅くまでありがとうございました。
大丈夫です、よく眠れましたし筋肉痛もありません!今日も3キロ走りますよ~。
タフ過ぎますか?あはは、それだけが取り柄ですから~。それでは今日もお願いしますっ!
サンプルには短いセリフから30秒ほどのセリフまでありますが、いろいろな長さのセリフに慣れておくといいでしょう。
オーディションに備えた台本サンプルや書き込み・記号についてのまとめ
声優は担当するキャラを演じるため、特殊な記号も含め台本にいろいろと書き込みをしています。
オーディションの台本は、登場人物とセリフが印刷されている程度のシンプルなもので、自分でイメージしたキャラを演じる力が必要です。
日頃から漢字の読みに慣れ、台本サンプルでセリフの練習をすると共に、必要に応じて台本に書き込みをすることがポイントになります。